開かずの窓

夜、8時。思いもかけず、雨が降り始める。
屋根なしの駐車場に停めてある車だ。運転席右側の窓が
5ミリ、開いているのだ。

なぜ、5ミリ開いているかというと、こわれているからだ。
パワーウィンドウのモーターが故障している。
ウィーンと、窓を下ろして、開けるのは、いいのだが、
ウィーンと、閉めようとすると、窓は、上へあがり、ピタッと
閉じた瞬間、ウィーンと、下へ向かって、降りていく。
何べんやっても、同じだ。閉まらない。

で、どうするかと言うと、小刻みに、窓を上げていく。
ウィン、ウィン、ウィン、ウィンウィン、ウィン、だ。
そして、ぴったり閉まる、5ミリ手前で、停める。
従って、近頃の私の車の、右前の窓は、5ミリ開いているのだ。

車を見に行ってみると、5ミリの隙間から、雨がわずかに、
降りこんでいた。
5ミリを閉めようと、スイッチを押すと、案の定、ピタッ、ウィーンと
窓は開いてしまった。

何度か、スイッチを小刻みに押して、閉めることに成功した。
紙一重の隙間で、止めたのだ。
こんなことは、そうそうできることでは、ないので、二度と、この窓は
開けない。おまわりさんに、コンコンと叩かれても開けない。
開かずのウィンドウである。

修理してもらうか。


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